平成十一年九月一七日
室の八嶋(大神神社)栃木
秋の日や大切株の湿り居り
鳥居の幣白く揺らせる秋の風
今朝の秋大樹の苔の厚くなる
三十二燈籠数へ秋の声
蓑虫の住み家となりぬ苔燈籠
冷やかな白晢肌の大樹かな
涼新た水琴窟楽奏でけり
手水舎の屋根に触れたる山葡萄
秋の蚊と室の八嶋を巡拝す
神の杜いよよ幽くす蛇の衣
雫して艶を増したる秋海棠
秋澄めり真鯉の遊泳神の国
玉雫きらめく蜘蛛の囲二重
大神社栃の木大樹初黄葉
仰ぎたる阿吽の鬼面秋気澄む
大神社苔の敷石冷まじき
水引草かすかな風に紅磨く
竹割りし静寂の秋を日が渡る
雨蛙一葉揺らして葉移りす
一日光杉並街道 大沢宿
せせらぎに馬頭観音涼新た
秋光や膠の色の松の瘤
秋水の数えの一句得たりけり
神鈴を振る風の中棕櫚は実に
花蕎麦の一朶の雲の白さかな