奥の細道吟行

50項

平成十八年六月十七日

 

 

 

福井 敦賀

 

天竜寺        福井
炎昼の石仏唇の動くかに

涼風や苔這ひ登る芭蕉塚
 鳳蝶花に止まりて翅拡げ
 万霊碑に白さ尽せる除虫菊
 炎帝に座布整然と並べらる
 観音の池透明にやご歩く
 岩清水合掌観音足濡らす
 法燈の大きく揺れて堂涼し

 

永平寺        福井
参道に人人人の薄暑かな
蟇蛙地を動かせる永平寺
涼風の廊下一麈無かりけり
迴廊の磨き込まれし涼さよ
修行者の迴廊板打つ炎暑かな
頬白く剥落四天王薄暑
一山の夏木立守る永平寺
万緑や青鐘吊鐘忘らるる
白山水の清水の静寂身を包む
絵天井の花鳥涼風ほしいまま
大香炉の香煙纏ふ薄暑かな
黒光りする大数珠の薄暑かな
すいすいと背鰭水切る錦鯉
 涼風を総身に受け合掌す
渓流に河鹿金鈴振りにけり
 老杉のあまた涼しく直立す