奥の細道吟行

40項

乙子神社  分水町
 ざわざわと若竹揺らぐ木下闇
 滴りの参道苔の厚かりき
  炎天や神社の屋根の乾ききる
  時鳥啼くせせらぎの獣道

国上寺本堂   分水町
 磴登る足元ひょいと蟇
 鐘楼の四本柱白く灼け
 水掛けし不動明王顔締まる
 日の盛り鎮む万元上人像
 天井の龍炎帝を遠くにす
 閻魔像の金のしゃく古る大暑かな
  忘らるる灼けし雷神縛石
  石仏のひとつひとつに野宣草
  風の噴き上げて来し鏡井戸

五合庵    分水町
 青紅葉庵に影を落としたる
 法師蝉腰掛けて聴く五合庵
  せせらぎの新涼告ぐる墓碑の前

つり橋    分水町
 串橋の大きなうねり夏寒し
  串橋の真芯涼凡極まれ
  嶺々茫々煙いて迫る夏霞