奥の細道吟行

36項

平成十五年九月二十七日

蚶満寺  象潟
 里松の罅割れ深しそぞろ寒
 彫深き十一面観音爽やかに
 芭蕉像の真上秋天底知れず
 九十九島の要の稲架の乾き居り
 溝蕎麦の盛り山門人を見ず
 朝風や仁王の肩に秋の塵
 昨夜の雨身に入み濡るる六地蔵
 閻魔堂の扁額破れ冷まじき
 葛の蔓垂れ結界の観音堂
 一千体の観音やさし爽やかに
 タブ大樹苔白々と秋の声
 芭蕉句碑かがみて拝す秋温り
 西行桜はやにニ三枚紅葉して

 能因島の黒松放つ秋の声

三崎公園  遊佐町
 怒濤音ひびく岬の花芒
 秋の濤碎く奇岩や鵜の佇てり?

十六羅漢岩  遊佐町
 秋天の白雲睨む羅漢像
 釣人の一人となりて秋の声
 秋日落つ飛鳥光帯ひろげたり
 花芒分け入る芭蕉句碑の道

 色鳥の二見が浦の窟に入る