湯殿山
万緑や総身に浴び佇ち尽す
水澄むや御手洗の銭白光す
大師像の胸元出づる黒揚羽
災天や白熱纏ふ大師像
十一の鳥居潜りぬ木下闇
覗き見る灼くる御堂の髑髏
爽やかに二拍手響き神域に
蟻の列信徒の杖に乱されし
熱湯を噴く厳素足艶めけり
夏草や結界続く神の山
足元の巨岩に蛇の横たはる
蝋燭の灯る岩壁苔の花
月山
月山道迷ひ迷ひし花野かな
月山のぶな林過ぎて百合の園
山百合の大輪仄と天に透ける
夏茜月山の空埋めけり
月山の紅萩人を若くせり
月山の懐深し時鳥
緑陰を深々湖面写しけり
花藻吸ひチュチュと幼魚光りけり
月山の道花清し山法師
湿原の隠り沼写すお花畑
木道の声がはずみぬ靫草