奥の細道吟行

33項

正善院黄金堂   羽黒山

 山門に吊らる草鞋の薄暑かな
 仁王尊向き合ふ足に暑を兆す
 闇涼し堂の如来の箔きらり
 荒梅雨の燻し銀屋根明るかり
 梅雨堂の観音仄と顔もたげ
 注連網をまはす巨石や苔の花
 賽銭の音良く響き梅雨寒し
 滝不動彫鮮明にびしょ濡れて
 青梅雨や?怒の閻魔像に逢ふ

羽黒山神社    羽黒山

 滝しぶき石橋常に湿り居り
 松蝉の遠き峰より声徹る
 山藤の大樹の天辺紫に
 苔の花埋む大樹に掌を濡らす
 雨粒の呑みつ呑まれしまむし草
 五重の塔要に巨杉涼しかり
 梅雨寒や羽黒神社に額衝きぬ
 青梅雨に染らす五重の塔建てり
 杉巨木参道夏の霧濃くす
 螺貝に信徒等並ぶ涼しさよ
 天邪鬼青梅雨に目玉ぎょろりとす
 毘沙門の金色の瞳の凄まじき
 雪渓の月山を我が力とす