立石寺 平成十四年六月四日
青嵐芭蕉の句碑の澄みにけり
老鶯に顔を向けたる句碑の前
みちのくの人に賜わるさくらんぼ
本坊堂桁の鬼面の薄暑かな
香焚きて部屋涼しくす舞楽面
雨蛙池より低く声上げし
境界へ日を傾けし鉄仙の花
マーガレット一面の日をはじきけり
法水を恋ひ影濡らす黒揚羽
風車地蔵が廻す立石寺
姥堂の屋根を掠めし黒揚羽
親子行く山寺の磴風薫る
姥堂の老杉闇と濃くしたり
磴と突く杖音奪ふ青嵐
巨木累々生気みなぎる夏の天
屏風岩垂直に立つ涼しさよ
蝉塚に佇ちて覚ゆる青葉冷え
夏草の石に坐りて水音聴く
若楓大日輪に透けにけり
若楓二本紅と兆しけり
子に父が摘む群生の著莪の花
仁王尊棲むしろがねの蜘蛛の糸
紫陽花の赤紫や日に濡るる
夏の日をはじく朱塗りの納経堂
蒼天を一望とせる茂みかな
涼風に實ぎて聴く山の音
岩肌にこだま老鶯鳴き止まず
神木もと涼風の床風坐す
涼風を受け微笑める阿弥陀仏
涼しさや龍の彫られし鉄燈籠