奥の細道吟行

25項


中尊寺       平泉  

 秋の蝉悲しきまでに一途なり
 月見坂森巌秋の人となる 
  秋の声聴ゆる朝の石鳥居
 萩の花一枝紅噴く月見坂
 黒揚羽光り参道案内せる 
  秋うらら日差し円なす杉並木
  男郎花老杉の根を要とす
 野葡萄の碧玉透ける山の蔭
 八幡堂騎馬掛軸の秋思かな
 動かねば足にまつはる秋藪蚊
 毒茸のかたまって地を暗くせり
 新涼や風を鳴らせる御神木 
  弁慶像の金小札冑や秋暑し
 秋の日や彩色笈の紅椿 
  秋霞北上川に鳶の笛 
  初風の肩をたたきて通りけり 
  眼の高さ東物見や蜻蛉飛ぶ 
  宝珠持つ秋思顔なき地蔵様 
  昨夜の雨冷ゆ屋根赤き地蔵堂 
  秋澄むや桧香強き薬師堂 
  爽やかに鐘楼鐘木紐揺れて