平成十二年七月二十二日
福島行
文知摺観音
鳥語降る新樹囲みし翁像
境内に土の香顕照り梅雨晴間
鐘楼の涼し福島眼下にす
鐘楼や涼風集む撞木の緒
夏木立宝殿殿の屋根白し
空蝉の吹かれてをりぬ甲剛碑
欝然と青苔つつむ文知摺石
賽銭の乾きし音や夏の堂
御開張涼し拝みし大座布団
杉大樹虎表碑に汗を拭ぐ
翁句碑楓若葉の圏に在り
足止め地蔵涼し笑顔のはるかなり
天井画龍の涼しき観音堂
観音堂藪蚊一匹耳かすめ
紫陽花の赤紫や人肌石
楓若葉の丘径一面苔厚き
多宝塔の上に群がる夏茜
水馬池に水輪をひろげけり
蝉の声沈むばかりの夜泣石
紫陽花や二歌碑囲ひ彩極む
川蜻蛉虎女の墓の裏を飛ぶ
睡蓮の寂と一輪開きけり