奥の細道吟行

29項

平成十四年八月三日

尿前の関      鳴子 

  関所跡に風の生まるる木下闇
  山風の句碑に縋りし赤毛虫 
  青苔の緊り滴る芭蕉塚
  涼しさや老杉の苔梢へまで
  水引草のくれない森を明るくす
  木槿咲く山禽しきり鳴き徹す

卦人の家   

  卦人の土間より入る涼しさよ
  飾り梁見え卦人の家涼し 
  蓋取れば鉄鍋を噴く暑さ 
  裏庭へ出てかなかなの人となる
  ぎしぎしと廊下を鳴らす極暑かな

山刀伐峠 

  山刀伐峠の蝮とぐろを巻きて居り 
  鬼百合や風の峠の崖淵 
  草を刈る古道ついに人に会わず

養泉寺      大石田 

  芭蕉句碑拝す頭上の風涼し 
  夏日濃し腹掛十重に巻く仁王 
  涼風の瞳やさしかりき奉納馬
  井戸廻る大蟻五匹黒光る
  糸すすきに集ひ構へる青蛙
  蒼天の遠き山並棚田行く揚羽 

 

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