平成十四年八月三日
尿前の関 鳴子
関所跡に風の生まるる木下闇
山風の句碑に縋りし赤毛虫
青苔の緊り滴る芭蕉塚
涼しさや老杉の苔梢へまで
水引草のくれない森を明るくす
木槿咲く山禽しきり鳴き徹す
卦人の家
卦人の土間より入る涼しさよ
飾り梁見え卦人の家涼し
蓋取れば鉄鍋を噴く暑さ
裏庭へ出てかなかなの人となる
ぎしぎしと廊下を鳴らす極暑かな
山刀伐峠
山刀伐峠の蝮とぐろを巻きて居り
鬼百合や風の峠の崖淵
草を刈る古道ついに人に会わず
養泉寺 大石田
芭蕉句碑拝す頭上の風涼し
夏日濃し腹掛十重に巻く仁王
涼風の瞳やさしかりき奉納馬
井戸廻る大蟻五匹黒光る
糸すすきに集ひ構へる青蛙
蒼天の遠き山並棚田行く揚羽
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